オフィシャルサイトリンク

パレット オフィシャルサイトへ

2024年1月28日日曜日

大津市内の小学校で、滋賀県産苺を使った「食育講座」

 滋賀県が開発した苺の新品種「みおしずく」を使った食育講座を、大津市北部小野小学校(小学6年生14名)にて行いました。講師は、パレットのパティシェ―ル吉田香奈子が担当しました。私は隅っこで助手に徹しました。

まず最初に、みおしずくを試食して「美味しい以外の言葉で、この苺の味わいを表現してください」小学生には少し難しい注文だったけど、みんな一生懸命考えていた。3人ほどに発表してもらいました。「最初はぶわ~っと甘いけど、酸味があってさっぱりしている」と、とても素直なコメント。テレビでの頭で考えている食レポとは大違いだ。






滋賀県産の小麦粉を使ったジェノワーズスライスにも、子供たちの「おっ~」の歓声が上がる楽しい雰囲気。ショートケーキの仕上げのデモを行い、小学生たちが3人一班に分かれて実際にショートケーキを作って、試食をしました。

この時にも「美味しい以外の言葉で感想を述べてください」に、小学生たちは一生懸命に考えてコメントをしてくれていました。最後は満面の笑みで「美味しい!」と締めくくる笑顔に感動をいただきました。

ささやかなことですが、この感動に、自らのお菓子作りのプロとしてのぶれない熱意を呼び起こしてくれたと感じました。この笑顔のために自分たちの日々の仕事がある。厨房からは見えないけれど、日々のお菓子作りの中で、しっかりと心に描いていたい笑顔だ。小学生の子たちに感謝の一日でした。

パティシェになりたい人たちの三つの困難

滋賀短期大学生活学科の中にある製菓マイスターコースの非常勤講師として、学生たちを見ていて思った事です。今いる学生たちは、コロナの状況で・・・と、枕詞のように説明されるコロナZ世代の人たちです。

Z世代は、物心がつくころにはモバイル端末に触れ、SNSを通じて交流することが当たり前。また、社会貢献や環境、多様性といった教育もしっかり受けています。他者は他者、自分は自分として、「自分らしさ」を考え続ける世代。さらに、生まれたときから低成長時代・超高齢化社会であり、将来の重荷を悲観的に意識している世代。価値観は保守的、人との和や既存の社会秩序を重んじる傾向があります。波風を立てずにうまくやっていこうとする安定志向が見られます。




チャットGPTの解説は理解できる。とても優しい子達です。一方で明らかに自然の中で生きていく動物の本能が麻痺している。つまり「アニマル的」ではなくなっています。これが、お菓子作りの仕事で生きていくために重要な「技能の習得」を自分都合を優先して勝手に困難にしている。

技能習得に時間がかかる人の「困難」を生み出す三つの習慣
①感情フィルターで受け止める習慣 苦手、好き嫌い、面倒、難しい、怖いと言うような自分が作り出す感情によって、自分が反応し保守的な「自分を守る行動」を選択する。
②損得勘定を中心に選択する習慣 選択の中心は、「自分にとって損か得か?」になる。
③自己中心の思い込み(小さい認知領域)で物事を捉える習慣 育った環境や過去の自分の失敗経験を引き合いに「できない理由」にする。自己保存本能が強く働き、自分を傷付けたくない。つまり失敗しないための最善策を考えている。成功と失敗は紙一重だから、一番ダメなのは「何も行動しない」ことだが、こう言う人の選択は、狭い認知領域の中での判断なので「できない理由」を盾にして「何もしない」ことのようです。

実話ですが、製菓コースを選択して入ってくる学生の中に「高校生まで母に包丁を使ってはいけないと言われて、使ったことがないです。」と、言う学生がいました。目の前の小さなリスクを回避することで、この人の持って生まれた大きな可能性を自ら失っている。尊敬する「稲盛和夫」は「小善大悪に似たり」と、フィロソフィーの中で一括しています。このルールを作った母親もだが、それを受け身で素直に守るこの人にも違和感を感じます。

お菓子づくりはアニマル的に没頭することで光が見える。言葉として定義すると「自分が作るお菓子で、他人を笑顔にする」ことだ。



自分を守ることに全力を尽くす子たち。言い方を変えると、自分自身と全力で戦い力尽きる子たちです。こう言う人たちでも変わるきっかけは同じ、誰にでもある普通のことだと思う。自己対話(質と量)と身近な家族との対話(質と量)を意識して変えることです。そうした日々の土台には、共有できる価値観(フィロソフィー)が必要です。それは、損得の価値観を突き抜ける「人として正しい」「自分との約束は守る」「自分がされたら嬉しいことを他人にもする」同じ意味で、「自分がされたら嫌なことを他人にはしない」もっとわかりやすく言えば「落ちているゴミを拾う」です。わかりやすい価値観を貫く一貫性に、その人の生き様が見えるのです。そこに「信頼」が生まれ、関係性が育まれて、関係性の中で「人」が成長していく。

そんなに難しい話ではないと思っている自分に「どうして難しくないと思うの?」と問いかける今日この頃です。


2024年1月22日月曜日

近江に生まれたいちご物語 プレス発表に行ってきました。

 滋賀県が開発したイチゴの新品種「みおしずく」を使ったスィーツ開発で、生まれた「近江に生まれた苺の物語(仮題)イチゴのスフレ」のプレス発表に行ってきました。

パッケージデザインが決まっていないので歯切れのわるいプレス発表になりました。企画段階ですが、左の写真のデザインで進んでいます。

みおしずくは、近江の風土に合った「かおり野」を母に、完熟時の甘味が強い「章姫」を父に、近江で生まれた新品種です。

みおしずくの特徴は白い花のような「香り」と腰のあるしなやかな「酸味」です。この特徴を生かし、この苺のブランドイメージを高めるスィーツを作るミッションです。

パレットが大事にしている「安全安心100年素材」という素材選びをベースに、みおしずくの特徴を引き出すために、二つの方法でイチゴの加工をしました。一つは「真空凍結乾燥」で作るドライフレーズ。もう一つは「真空減圧加熱」による低温沸騰で香りを損なわない。さらに「真空減圧冷却」によって強制的に気化熱を奪い香りを失わない苺ソース。その二つを苺スフレに入れて、香りと酸味を印象強く仕上げました。

だからと言って、スフレから強い苺の香りがするわけではない。焼成で加熱すると香りは弱くなります。口に含むと甘みと酸味が織りなす味わいのハーモニーが長く残ります。心地よい余韻は、甘みと酸味によって生まれる。口の中でゆっくり咀嚼して吞み込むその時に、口中から鼻腔に抜けていくみおしずくの「瞬間の香り」二つの加工方法によって生まれる瞬間です。ちなみに、この香りは「わかる人」と「わからない人」がいます。

この香りの感じ方を、言語化して説明してから、咀嚼するとほとんどの人が分かります。説明がないと、わかる人とわからない人に分かれます。そんなことも楽しみながら,近江に生まれた苺物語のエンディングをそれぞれの方の中で楽しんでいただけたらと願います。

パレットのお菓子作りは「素材の持ち味を生かす」見た目は普通でも、食べ終わると「また食べたい」と思っていただけるお菓子作りにポイントを当てて味を作っています。今回の苺スフレも同じような考えで、素材の旨味を生かすことに徹して、食べ終わると「また食べたい」と思っていただける仕上がりと思っています。

時代が激しく変化していっても、こうして味わう「自分の好きな味」は、ゆっくりと沁み込むように味わいたいと思うのです。誰がどこで作ろうが、味わいには意味はない。この味に心を癒され、また食べたいと思える。「心に残るお菓子作り」を大切にしたいと改めて思うプレス発表でした。



2023年12月26日火曜日

自分を大事にすることから

先日、ツムラさんの新聞広告を見ながら、大事だなって思った言葉「自分を大事にすることから」


と、いうのも今年の新入社員研修の講師をしながら、まずは自分を大切にしてほしいという思いを持ったからです。そんな自分の心にヒットした広告でした。

パレットでは入社3年目までは、品質管理と社員育成の目的で、社内技術検定を行っています。技術の見える化で、何を頑張ったらよいか戸惑う新人たちの成長へのスモールステップをわかりやすく示していると思っています。しかし、検定をクリアしなければ・・・と、自分自身に重圧をかける人が今年は多かった。コロナの影響もあるのか?と、思うが、いずれにせよ、自分で超える課題だ。

新入社員研修で「素直、誠実、謙虚」が、大事。特に謙虚さです。それは、人に対して・・というところもあるが、自分と向き合った時に、自分に厳しい言葉をかけているところを、ちょっと謙虚になって頑張る自分を大事にするというようなこと、自分を大事にする人が関わる人に対しても大事にすることにつながる。人と人の関係性の前に、自分との関係性が大事なのです。決定的なことは自己対話能力。その時でも「素直、誠実、謙虚」に、自分と対話をすることです。

新人たちがこの自己との関係性をきちんと作る。つまり、日々変化する自分を整える日々の中に、自らの可能性を広げるきっかけが作られていく。まず「自分を大事にすることから」そんな思いに、ツムラさんの広告が、響いたという話です。

(Temporary Backup) 「インカの目覚め」で気づく

ふるさと納税で「インカのめざめ」というじゃがいもを買った。味は、栗やさつまいもの甘みを加えたじゃがいもという感じです。最後に残る甘味と旨み、コクが「インカのめざめ」らしい味だと思います


それで、ポテトサラダを作った。甘みがあるので、塩胡椒、マヨネーズに、その場にあったレモン果汁をかけてみた。爽やかだがレモンの明るい日差したっぷりの香りがじゃがいもの根っこのような、土の中を感じる陰湿な匂いと並んで二つの主張を感じる。あまり仲良くなれそうに無いので方向転換。熟成したワインビネガーに変えてみたら、スッと馴染んだ。育った環境の違いがこの少しの違和感を作るのだろう。

他にもおでんや、肉じゃがなども作ってみた。どれも美味しいが、インカのめざめの美味しさをスッと感じたのは、じゃがバターにいか塩辛を重ねて食べた時だった。この芋だからこの塩味をしっかり受けて負けていない。たまたまのペアリングでアルザスのリースリングともよくあっていた。家で自分の好きに作る料理に、家飲みワインでのペアリングならではの自画自賛。文句を言うとすれば奥さんだけだ。「あわへんかった?なんかごめん」で済ませてしまう。





ひたすら自宅で料理を作り、セラーにあるワインとのペアリングが、とても気楽だ。そして、気分転換させてくれる「楽しみ」だ。お菓子作りのプロとしてのお菓子作りは、コンマ何グラムまできちんとしないと、仕上がりが違ってくる。目に見えない「こんな感じ」を求めて、突き詰めていく。それはそれで楽しんだけど、感じる「圧」は、家での料理とは比較できないものだ。緊張と弛緩、抽象と具体などの対極を行ったり来たりしているのが性に合っているのかと思います。それが、ケーキ屋さんの経営者としての異質を作っているのかと、この頃思うようになってきました。

2023年12月2日土曜日

職場体験実習の中学生が書いた日報

 10月頃から、市内の中学校からの依頼で、職場体験の中学生受け入れています。そんな中学生にも、日報にコメント書いてくださいと、指導している。言葉にすることで、その中学生の「一日の学び」は、化学変化を起こすと思っています。

そんな一人の中学生が書いた日報です。

「洗い物をしているときに「ありがとう」と、言われた。後片付けだけど、ケーキを作ることには必要なこと。それでも、言われてうれしかった。大きな仕事から、小さな仕事までたくさんあるけれど、どれも気持ちを込めてやることが大切だと思った。3日間たくさんにありがとうございました。一緒にたくさんのことができて、うれしかったです。」

とても素直なコメントに”中学生らしさ”を感じる文章表現が、すっと自然な感覚で、心にしみ込んできます。わずか3日間の体験学習で、そんな風に感じて頂けて、こちらから「ありがとう」を伝えたくなります。

小さな「気づき」を、今目の前の洗い物をしている自分から、ちょっと俯瞰してお菓子づくり全体をとらえて、自分の「学び」につなげていく。気づきを自分の学びにつなげる力は、どこから学んだのか?DNA?育った環境?・・・この人が日々の時間を共に過ごす人から自然と身に付けた感覚なのか?日々の目の前のことを素直に受け止められない私の小ささを感じます。止めているのは、ちいさな自分を頑なに守ろうとする”自己保存本能”だと思う。

小学校の先生のお話で、聞いたことです。小学校4年生くらいから子供たちが算数嫌いになっていく。分数や四捨五入などの”概念”が必要になってくるからだそうです。経験的感覚を言葉で伝える難しさの理由と思います。目に見えないことを伝える難しさ。その難しいことを”うれしかった”の素直な感性がすっとしみ込み広げ伝わる心地よさは、学びのコツになるのかと思います。

私の小ささはさておき、中学生の素直な「学びのサイクル」は、多くの人への新たな気づきになると思います。中学生のかわいい笑顔から私も学びました。感謝です。

2023年10月14日土曜日

滋賀県洋菓子協会主催技術講習会を開催しました。

今、日本で最も受講者を集めるパティシェ 和泉光一シェフをお招きして、日本洋菓子協会連合会、滋賀県洋菓子協会主催で、講習会を開催しました。キャンセル待ち状態になりました。



講習会は、和泉シェフの作りながら話す“ライブショー“でした。わかりやすい説明、声のトーンも心地よく響くなどもあるのかと思います。受講される方の熱意も重なって、楽しい講習会となりました。講習で作ったお菓子も、キレの良い後味の軽いもので「売れるお菓子」と、感じました。



前日にシェフと食事をして、直接話す時間がたくさんありました。経営のことや新人教育、製造体制など話は尽きることがなかった。ぼそっと「ケーキ屋さんとはあまり仲良くなれないんです」と、笑って話してくれて「同感です」と、応えた。お互いケーキ屋さんなんだけど?

ケーキ屋さんの職人育成は、歴史の教科書に出てくる16世紀の産業革命のマニュファクチャシステム(家内制手工業)の延長線上にあると思います。ケーキ屋さんは手工業による協働体制です。そこに、働き方改革という時代の変化が加わって転換期がきた。多くの休日、短い労働時間と時間がかかる技術習得という矛盾。さらに、受け身で働く被害者意識の人には、技術の伝承は難しい。技術習得は、自分ごととして取り組まないと身につかない。16世紀から何ら変わらない歴史的事実?だと思う。

技術習得は「自転車の乗り方を覚える」と同じだと思う。技術として覚えるのは、ペダルを踏む、ハンドルを操作する、ブレーキを握る。肝心なのは、乗りながら覚える「平衡感覚」。その人が身体的感覚を駆使して掴むもの。お菓子作りの技術習得も同じ、講習会でレシピや工程を教えてもらっても、そのお菓子の平衡感覚は、その人の身体的感覚(五感)で捉えるもの。目に見えない感覚と目に見えるレシピや工程がセットになって、ようやく技術習得となる。

「技術を身につける」わかっていそうだが、身につけるというところに意味がある。お菓子作りにチャレンジしてくるZ世代の苦手な部分→非認知能力=自分の身体的感覚を捉える能力。こんな感じ、あんな感じの身体的感覚を辛抱強く積み重ねて時間をかけて「身につける」のだ。身につけることで、ようやく承認される世界なのです。身につけた技術で安定的に再現するパティシェが「仕事のできる人」です。そして、経験を再構築してレシピに落とす人が「プロ」だと思うのです。和泉シェフの講習は、そうしたモヤっとしていることを再認識させてくれました。感謝です。