講習会は、和泉シェフの作りながら話す“ライブショー“でした。わかりやすい説明、声のトーンも心地よく響くなどもあるのかと思います。受講される方の熱意も重なって、楽しい講習会となりました。講習で作ったお菓子も、キレの良い後味の軽いもので「売れるお菓子」と、感じました。
前日にシェフと食事をして、直接話す時間がたくさんありました。経営のことや新人教育、製造体制など話は尽きることがなかった。ぼそっと「ケーキ屋さんとはあまり仲良くなれないんです」と、笑って話してくれて「同感です」と、応えた。お互いケーキ屋さんなんだけど?
ケーキ屋さんの職人育成は、歴史の教科書に出てくる16世紀の産業革命のマニュファクチャシステム(家内制手工業)の延長線上にあると思います。ケーキ屋さんは手工業による協働体制です。そこに、働き方改革という時代の変化が加わって転換期がきた。多くの休日、短い労働時間と時間がかかる技術習得という矛盾。さらに、受け身で働く被害者意識の人には、技術の伝承は難しい。技術習得は、自分ごととして取り組まないと身につかない。16世紀から何ら変わらない歴史的事実?だと思う。
技術習得は「自転車の乗り方を覚える」と同じだと思う。技術として覚えるのは、ペダルを踏む、ハンドルを操作する、ブレーキを握る。肝心なのは、乗りながら覚える「平衡感覚」。その人が身体的感覚を駆使して掴むもの。お菓子作りの技術習得も同じ、講習会でレシピや工程を教えてもらっても、そのお菓子の平衡感覚は、その人の身体的感覚(五感)で捉えるもの。目に見えない感覚と目に見えるレシピや工程がセットになって、ようやく技術習得となる。
「技術を身につける」わかっていそうだが、身につけるというところに意味がある。お菓子作りにチャレンジしてくるZ世代の苦手な部分→非認知能力=自分の身体的感覚を捉える能力。こんな感じ、あんな感じの身体的感覚を辛抱強く積み重ねて時間をかけて「身につける」のだ。身につけることで、ようやく承認される世界なのです。身につけた技術で安定的に再現するパティシェが「仕事のできる人」です。そして、経験を再構築してレシピに落とす人が「プロ」だと思うのです。和泉シェフの講習は、そうしたモヤっとしていることを再認識させてくれました。感謝です。